最近、PCを買い換えたので、せっかくなのでエンジニアとPCについてのお話でも書いておくことにします。
Webエンジニアは、どれくらいのPCスペックがあれば開発や実務をこなせるのか。現役フリーランスの意見を聞きたい方もいるのではないでしょうか。
実際、私がPC選びをした際の考えと共に「これくらいあれば」という目安を本ページではご紹介したいと思います。
PC歴は20年以上、自作も10台近くやっているフリーランスWebエンジニアがお届けします。
PC買い換え前
比較対象として、今回私がPCを買い換える前は実務でどうだったのか、使えたのか、という点からお話ししたいと思います。
マシン環境
振り返って見れば2010年くらいに自作したマシンです。つまり10年以上前のパーツで構成されています。
完全に時代に取り残されていますね……。構成は以下です。
- OS: Windows 10 Professional 64bit
- CPU: Core i7-4770(第4世代) @ 3.4GHz 4コア 8スレッド
- メモリ: 32BG(8G×4)
- ドライブ1: SATA SSD 500GB(OS用)
- ドライブ2: SATA SSD 250GB(仕事データ用)
- ドライブ3: SATA 3TB(その他データ用)
- ドライブ4: SATA 4TB(バックアップ用)
- グラフィクス: NVIDIA GeForce GTX 780 Ti
ドライブやグラフィックスは逐一変えてきましたが、その他は当時としてはそこそこ良いスペックだったと思います。
不自由に感じていたこと
実は、それほど不自由に感じたことはありません。プログラミング・HTML/CSSコーディング以外に画像や動画も処理しますが、充分業務用途にも使えていました。
しかしながら今回PCを買い換えた理由を挙げると、以下の様な不自由があったからです。
- PHPStan(PHP コードの静的解析ツール)で遅い。CPUが100%になる
- C/Dドライブの容量が足りない。WSL2(Linux仮想マシン)を使うのを止めた程
- Chromeであまりに極端に(100個等)タブを開くとメモリが足りずスワップすることあり
- M.2 SSDにマザーボードが対応していない
- Windows11に対応していない(CPUとマザーボードが非対応)
- グラフィックカードが古すぎてPremiere(動画ツール)が非サポートになるらしい&レンダリング遅い
- 同上の理由で、Stable Diffusion(生成AI)が動かなかった
最後の方はWebエンジニアとあんまり関係無いですが
意外と古いPCでも実務に使える
身も蓋もない話になってしまいますが、そこそこのCPUとメモリ(32GB)があれば、Webエンジニアはそこまで高機能なPCは不要なのかもしれません。
しかしながら、特にPHPStanはCPUが100%になるほど負荷が掛かっているので、CPUを高速なものに変えれば、より早く解析が終わるのではないかと思いました。
Windows10のサポートも残り2年ほどで切れるということ。そして昨今の生成AIの進化から乗り遅れたくないということもあり、新PCの購入を決意しました。
2023年の理想のPC構成を考える
というわけで、最近のPCに疎かった私は久々に現在のパソコン・パーツ等の情報収集をしました。「エンジニアのPC」を買い換える機会がある方は、参考にしていただければ幸いです。
ノートorデスクトップ
これはどっちでも良いです。持ち運んで使いたいかどうかですので、人によります。
ただ、同じ値段であればデスクトップの方が比較的高性能なのは昔から同じです。例え性能がそれほど変わらなかったとしても、デスクトップの方が放熱が有利です。
OS
Windows 11にはProfessionalとHomeがあります。これは毎回悩み所になりますね。
Proの方は、以下あたりはそこそこ実務でも使える内容かもしれません。
- BitLocker によるデバイス暗号化(セキュリティ向上)
- リモートデスクトップ接続(リモートからWindowsPCを操作できる)
リモートデスクトップは顧客のPCサポートで使ったことがあります。……が、よくよく調べてみると、操作される側にProエディションが必要ですが、操作側はHomeエディションでも利用可能とのこと。
それならHomeエディションでも良いように私は思いました。自分で必要と感じる人だけ、Proエディションにすれば良いと思います。
CPU
今買うなら、以下のどちらかの世代になるでしょう。
- 第13世代 Core iシリーズ(Raptor Lake)
- 第14世代 Core iシリーズ(Raptor Lake Refresh)
私が購入時は代13世代が最新でしたが、正直どちらも高性能なのでどちらでも良いと思います。もちろんより安く、高コスパで変える方が良いですね。
次に、シリーズです。
- Core i3(エントリー)
- Core i5(ミッドレンジ)
- Core i7(準ハイエンド)
- Core i9(ハイエンド)
今はなんだか増えてますねー。
要は数値が上がるほど高性能になります。正直、10年前のCPUでもそこまで遅いと思っていなかったので、最低ミッドレンジのi5以上で良いのではと考えます。
例えば、私の旧PCのCore i7-4770(第4世代)と、比較的安価なCore i5-13500(第13世代)でも、こちらのベンチマーク比較サイトを見るとシングルコアで約2倍、マルチコアで4~5倍の性能差があります(もちろん新しいi5の方が上)。
もし予算があれば、i7~を検討してみると良いかもしれませんね。
メモリ
個人的にはWindowsなら32GB以上をお勧めします。
Webブラウザのタブを100個とか開いたままなどにするような使い方をしなければ、私もそこまでメモリを使い果たすようなことは無かったからです。
私の場合、32BGでメモリの使用量50%くらいはよくいきますが、スワップ(メモリを使い切る)するまではめったにいきません。
そもそも32GBで10年使ってきましたからね。予算が厳しい方は後述しますが、後から増設できるようにする手もありです。
ドライブ
今日において、システムドライブがSSDであることは必須でしょう。私は10年以上前からずっとSSDですが、体感に大きな差があります。
今日においては、高速なM.2 SSD(Generation4~)が良いのではと思います。
具体的な容量や追加ドライブ構成に関しては、人によって&PCの使い方よって差があるので一概に言えません。
まあ、いつでも替えが効くのであまり重要視する必要は無いのかなと思います。
グラフィクス
グラフィックカードまたはビデオカードと呼ばれるパーツです。エンジニアにとって、そこまで高品質なグラフィックスの機能は必要ありません。
とは言え、以下はチェックしたいところです。
- 最大解像度と出力数
- (グラフィック系の)生成AIをやるか
- ゲームをやるか
- 動画を作るか
今なら4K(3840×2160)か、WQHD(2560×1440)が情報量が多く便利です。エンジニアではマルチモニタ(2台)が超絶便利なのでお勧めです。
ですので4K出力が2台以上できるといいですね。
また、エンジニアでも生成AIに取り組む人は多いです。そういった方はある程度高性能なグラフィックカードを積んでおきたいですね。
もしも生成AIやゲーム、動画を作るなら、NVIDIAのGeForce RTX 40X0系を選んでおけば間違いないでしょう。40X0部分の数値が上がるほど高性能です。
- GeForce RTX 4060(生成AIやらないならこれでも高性能)
- GeForce RTX 4070
- GeForce RTX 4070 Ti(生成AIをよく使うならこれ以降が良し)
- GeForce RTX 4080(激高い)
- GeForce RTX 4090(ハイエンド、激高い)
もしも生成AIをやらないなら、ご自身の目的(例えば4Kを2台出力可能など)が達していれば、何を選んでも大抵問題無いです。
私の購入例
改めて私が購入したPCの構成を挙げますので、先ほどのお勧めと併せて参考にしていただければと思います。
普段は自作派ですが、現在は自作よりも買う方が安かったので、15年ぶり?くらいにWindowsマシンを購入しました。
買ったのはhp社のHP ENVY Desktop TE02という型番です。今のパソコンって大分小さいんだなぁと思いました(お古の自作PCの方が断然デカい)。
構成
構成は以下です。
- OS: Windows 11 Professional 64bit
- CPU: Core i7 13700 CPU @ 3.4GHz 16コア 24スレッド
- メモリ: 32BG DDR5-4000MHz(16GB×2、空きスロット2で最大128GB)
- ドライブ1: M.2 SSD 1TB(OS/データ用)
- ドライブ2: 空き(自分で後から好きに追加できる)
- グラフィクス: GeForce RTX 4070 Ti
ドライブが1個で心許ないですが、後から自分で追加できること。そしてメモリスロットも空きがあるので、拡張性も充分と思い選択しました。
これでいくら位だと思いますか?この後書きますので想像してみてください。
買ってみてどうだった!?
当然ですが早いです。個人の感想ですが、こんな感じ。
- ブラウジング:
全体的に早くなりました。楽天市場などの重いサイトでも、ちょっと早くなったような? - WordPressの記事投稿:
当サイトの投稿のため毎日開いていますので参考までに。ブロックエディタなどではたまにひっかかり感を感じますが、前より良い感じがします。 - ソフトの起動:
全体的に早くなりました。特にAdobe Illustrator等の重いソフトは分かりやすく、半分くらいの速度で立ち上がります。M.2 SSDのおかげかと。 - 動画のエンコード:
まだあまり長い動画をエンコードしていませんが、長い(重い)ほど、これから体感できるのだと思います。 - 開発体験:
一番重要なポイントです。しかしVSCodeはもともと重さを感じませんし、あまりよく分かっていません。が、各種ビルドが早くなったように思います。また、少なくともひっかかるような所は全くなくなり、ストレスフリーです(PHPStanはまだ試せていません)。
もともとCPUは負荷がかかる場合しか重さを感じていなかったので、一番体感として大きいのはM.2 SSDの読み込み速度かもしれません。
とにかく、読み込みのためにひっかかるような事がなくなりました。
逆に、ChatGPTの回答の遅さが目に付くように(汗)。Webサイトもそうですが、サーバー側が重い場合はしょうがないですね。
いくらだった?
hpは何らかのキャンペーンをしょっちゅうやっており、当時約25万前後くらいだったと思います。やはり世界的大企業なので数による優位性があるのでしょう。
私の希望の組み合わせで一番安かったという理由でhpのこの製品を購入しました。
探していた絶対条件は以下です。
- Core i7~(せっかくなので性能の向上を体感したかった)
- メモリ32GB以上(今で困っていないけど最低限欲しい)
- ドライブ500GB以上(後で自分で交換・追加するけど、これ以下だと他で使い道も無いため)
- RTX 4070Ti(生成AIはこれ以上がベンチマーク的に良さそうだった)
同じような理由でdell(以前はdellが安かったので使っていた)も探しましたが、いつの間にかあんまり安くなくなっていたのでhp一択でした。
後悔したことは!?
正直、私にはRTX 4070Tiは自分にはオーバースペックでした。
生成AIも快適に動作し、最初は楽しく、ビジネスに活かしてやろうなどと思っていました。……が今では忙しくてやらなくなりました(汗)。私はPCゲームもやりません。
RTX 4070Tiは単品で10万以上するパーツなので、これがなければ全然安く買えていたことになります。もうちょっと安いのでも良かったと思います。
今では4Kモニタ2台を稼働&動画エンコードだけに動作しています。10万あれば、新しいタブレットなどでも買えば良かった……。
金銭面で難しい方へ【妥協プランを考える】
ここまでは「理想」を書いてきました。
しかし実際には、以下の様な方も多いのではないでしょうか。
- 今は金銭面で難しい
- お得な特売・セールの構成で買いたい
- 多少のパーツの妥協は必要と考えている
これらに共通することとして「ちょっと足りない」モデルを検討せざるを得ないケース。実際は結構あると思います。
そういった場合の、私が考える妥協プランを補足しておきます。
これは妥協しても良いけど、これはしない方が良い、ということなどを書きます。
CPU
Core i9を Core i7に妥協などといった、どちらも高性能な範囲の妥協ならたいした問題ではないでしょう。ですが、とりあえず安いの……というのはやめた方が良いです。
というのもCPUは交換するのがリスキーだからです。
自分の中で、最低これ以上(例えばCore i5以上)というのは決めておき、その条件にあったCPUを選びましょう。
メモリ
自分の求めるメモリ、例えば私なら32GBに足りなくても大丈夫です。特に、セールやアウトレットなどのお買い得品は、メモリが固定されていることもよくありますからね。
その場合は、
- メモリの空きスロット(スペース)があるか
- 最大何GBまで拡張できるか
などをチェックすると良いでしょう。
空きスロットにメモリを追加するか、もしくはメモリを取り替えるかによって、最大メモリを増やせるのであれば、妥協するというのも一案です。
メモリ程度であれば追加や抜き差しが簡単なので、メーカー保証もそれほど気にならないと思います(心配な場合は問い合せましょう)。
ドライブ
ドライブも後から変更しやすいので、妥協しやすいパーツです。
ただしシステムドライブ(Cドライブ)の換装(交換)は多少知識が要ります。PCに詳しく無い方は、最低限システムドライブだけは自分の要望に沿う容量にしておくとよいでしょう。
ドライブの「追加」に関しては、比較的簡単です。ドライブのスロットに空きがあれば、接続することでドライブを増やすことが可能です(もちろん別途初期設定は必要ですがググれば分かるレベル)。
そのためにも、ドライブの空きスロット数は要チェックしてください。
グラフィックカード
グラフィックカードも交換はしやすい方です。……が、自分で買うよりも、メーカーは大量仕入れのために安く価格指定されていることもめずらしくありません。
私が今回買ったGeForce RTX 4070 Ti入りのPCもそうでした。
特に高機能なグラフィックカードを希望されている方は、最初からグラフィックカードありきで選ぶことをお勧めします。そうでない方は妥協しやすいポイントになります。
まとめ
以上、現役Webエンジニア目線からの、2023年時点においてのPCの選び方でした。
PC選びは、人それぞれ使うツールや、PCの使い方異なるので一概には言えません。ですが、Webエンジニアという職業で、私は特別なことをしているわけではないので多くの方には参考になると思います。
PCは高額ですから、できるだけ失敗をしたくありませんよね。本ページの内容が少しでも快適な開発体験に繋がれば幸いです。
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